国際情勢

海自「そうりゅう型」潜水艦の豪輸出はアメリカの罠か?

オーストラリア潜水艦導入計画

海自の「そうりゅう型」潜水艦をオーストラリアに輸出する動きがある。果たして日本独自の潜水艦技術が流出しないか?

現在オーストラリアはコリンズ級潜水艦(排水量3,300トン)を運用している。

今後2020年~2030年に12隻の潜水艦を更新する計画で、500億オーストラリアドル(建造200億オーストラリアドル、メンテナンス300億オーストラリアドル、合計約4兆円)の大型契約と言われる。

現在のコリンズ級潜水艦は1996年~2003年に6隻が就役した。スウェーデン企業の設計だが、騒音などの問題もあり、運用上問題が出ている。

ライバル潜水艦

スウェーデン企業設計のコリンズ級潜水艦は不具合が多かったため、次期潜水艦ではスウェーデン企業の採用の予定はなく、日本、ドイツ、フランスの中から選ぶ方針。

・ドイツ 「216型潜水艦」

「214型潜水艦」(排水量約2,000トン)輸出モデルを基に4,000トン級を新設計する方針。「214型潜水艦」はギリシア4隻、韓国9隻の契約があるが、どちらも現地生産で問題が生じている。

また、排水量2,000トンの潜水艦から4,000トンに拡大することは技術的に難しいとされ、やや、ドイツ案は不利とされる。

・フランス「バラクーダ級」

フランスの「スコルペヌ型潜水艦」(排水量1,800トン)はスペインとフランス製造で、インド海軍にも採用されている。

しかし、排水量が少ないので、フランスの原子力潜水艦(排水量5,300トン)を通常型に変更したバラクーダ級(排水量4,500~5,000トン)を提案しており、この案が採用された。

・日本 「そうりゅう型潜水艦」(排水量4,200トン)

日本海上自衛隊の最新鋭潜水艦。現在7隻就役。三菱重工業(神戸造船所)、川崎重工業(神戸工場)が建造。

建造費は約500億円、リチウムイオン電池を搭載する11番艦は630億円。

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オーストラリア現地生産の方針

オーストラリアの国内雇用維持のため、オーストラリア国内での建造の方針。

オーストラリアで現地生産できるか?

自衛隊の潜水艦は溶接可能な鋼材の耐力としては世界最高水準である耐力110㎏f/mm級の「NS110鋼材」を使用している。

この高性能鋼材をオーストラリアで現地生産するとなるとかなりの規模の資金が必要。

・ノックダウン方式

日本で部品を製造し、オーストラリアで潜水艦に組み立てる方式。部品製造技術をオーストラリアに開示することなく、技術流出を最低限にできる。

・ライセンス生産方式

日本の製造技術を提供しオーストラリアで部品をほとんど製造し、オーストラリアで造船する。技術流出が懸念される。

オーストラリア国内の親中国派

ターンブル豪首相は、2015年11月15日にオーストラリア首相に就任した。ターンブル新首相は、アボット前首相に退陣を迫り、オーストラリア自由党の党首選挙でアボット前首相に勝利してオーストラリア自由党の党首となり、その後首相になった。

アボット前首相は親日派とされるが、ターンブル新首相の息子は中国共産党員の娘と結婚し親中派とされる。

オーストラリア労働党は2007年~2013年まで政権を取り、ラッド氏、ギラード氏が首相となった。オーストラリア労働党は中国よりの政権と言われる。今後、再びオーストラリア労働党が政権を取る可能性もある。

アメリカも欲しがる日本の高度な潜水艦技術

アメリカは原子力潜水艦だけで、通常型潜水艦を建造していない。静粛性など「そうりゅう型」の性能を高く評価(脅威)に思っているアメリカ海軍は、「そうりゅう型」の情報を欲しがっているが、日本は情報提供していない。

オーストラリアに輸出された場合、アメリカや中国に情報が流れる可能性がある。

アメリカの思惑

アメリカの対中戦略は、中国の潜水艦発射ミサイル(SLBM)を搭載した潜水艦(SSBN)を南シナ海に封じ込めることにある。そのためアメリカは、オーストラリアが潜水艦をもつことが有効と考えている。

オーストラリアに輸出される潜水艦の本体は日本製だが、武装はアメリカ製になると思われる。当然、アメリカの軍事企業が豪に輸出された「そうりゅう」のデータを得て、武装することになるので、間接的に「そうりゅう」のデータがアメリカ企業に流れることになる。

まとめ&補足

もし、「そうりゅう」がオーストラリアに輸出されれば、技術やスペックがアメリカや中国に流出する危険性がある。

しかし、中国が技術情報を得たとして、実際に日本製「そうりゅう」と同じ性能の潜水艦を作れるかどうかは、別の話だ。

現在のところ、海自の「そうりゅう」が、平時に南シナ海まで行って、中国の潜水艦の警戒監視をすることはできない。

アメリカが日米韓豪で中国の封じ込め戦略を実施している以上、日本が「そうりゅう」で南シナ海で中国潜水艦の警戒監視ができないなら、それができるオーストラリアに輸出するしかないだろう。

日本が中国潜水艦の警戒監視をできる潜水艦を持ちながら、その潜水艦を南シナ海にも派遣せず、またオーストラリアにも輸出しないでは、日米同盟の存立すら危うい。

しかし、逆に、中国が「そうりゅう型」の性能を知れば、中国潜水艦が全く気付かないうちに、一瞬で攻撃されることをシミュレーションして分かるだろうから、それが抑止力になる可能性もある。

そうりゅう型の最大潜航深度

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