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中国軍空母「遼寧」が沖縄宮古海峡を通過、軍事的には意味ない

2016年12月25日、中国海軍初の空母「遼寧」が沖縄県の宮古海峡(沖縄本島~宮古島間300km)を通過し、西太平洋で展開した。

中国海軍遼寧空母艦隊は、宮古島から110kmの宮古海峡を通過、その際、随伴するフリーゲート艦から哨戒ヘリが発進、宮古島の領海10kmまで迫った。

このため、航空自衛隊那覇基地からF-15Jがスクランブル発進した。

軍事的意味はないが、政治的には大きな意味がある

「遼寧」を中心とする中国軍空母打撃艦隊は8隻体制で出航し、そのうち6隻が沖縄県の宮古海峡を通過した。

空母 遼寧 1隻 6万7500トン
ミサイル駆逐艦  ルヤン級 3隻  6,500トン
フリーゲート艦  ジャンカイ級 2隻  約4,000トン

「遼寧」は旧ソ連時代にウクライナで建造中だった空母「ワリヤーグ」を未完成で中国が輸入し、完成させた。搭載する艦載機J15もウクライナが保有していたロシアの艦載機Su-33の試作機を輸入し模倣したものだ。

「遼寧」はアメリカ軍の空母と比較すると未熟だ。また艦載機J15は高性能エンジンを開発でききなかったため、空母の短い甲板から離陸するには出力が足りない。そのため艦載機J15はフル装備では離陸できず、搭載する兵器を少なくして重量を軽減しやっと離陸できる状態だ。実戦能力はないに等しい。

したがって、現時点では中国の空母打撃艦隊の軍事的能力は低い。

空母「遼寧」が西太平洋に展開する意味

海上自衛隊は、宮古海峡に「そうりゅう型」潜水艦を2~3隻展開し、中国の空母打撃艦隊を追尾していると思われる。

「そうりゅう型」潜水艦は1隻当たり合計20発~22発の89式魚雷、ハープーン対艦ミサイルを搭載しており、1隻で、中国の空母打撃艦隊6隻を10分で撃沈できる能力を有する。

したがって、今回の中国軍、空母「遼寧」艦隊は日本に対しては軍事的意味はない。

しかし、中国軍空母が西太平洋に展開した政治的意味は大きい。まず、アメリカの次期トランプ政権に対して、強烈なメッセージを発したことになる。もちろん、現在のアメリカのオバマ政権なら中国の空母に対して、なにもしないと予想して西太平洋に展開したのだ。

2017年1月にトランプ氏が大統領に就任した後に、中国軍空母が西太平洋に展開したなら、アメリカ軍は、空母艦隊を出撃させたかもしれない。その場合、アメリカ軍の圧倒的軍事力の前に、中国軍空母は逃げ帰るしなない。

つまり、中国軍にとって空母「遼寧」を西太平洋に展開できるのはトランプ氏の大統領就任前のこの時期しかなかった。この機会を逃すと数年間は、中国の空母を西太平洋に展開することはできないと中国は判断したのだろう。

中国軍は強気で出ているようだが、実はこの時期を選択したのは「弱気」を表している。

中国、ヘリと飛ばし、自衛隊F-15Jをロックオンか?

中国軍、遼寧空母艦隊は随伴するフリーゲート艦から哨戒ヘリ1機が発進し宮古島の領空10kmまで接近した。このため、沖縄本島那覇基地から航空自衛隊のF-15Jがスクランブル発進した。

このヘリ発進の目的は、F-15Jをおびき出し、遼寧空母艦隊の対空ミサイルでロックオンすることだ。最近、中国軍は自衛隊の航空機をロックオンすることを、軍事的成果とする傾向がある。

ロックオンとは、いつでもミサイルを発射できる状態に置くことで、中国軍内部的には「撃墜判定」していると思われる。自衛隊の戦闘機をロックオンすることを中国軍内部では軍事的成果とし、遼寧空母艦隊の軍事的成果としてアピールするためと思われる。

東南アジア諸国への影響

空母「遼寧」は日本に対しては軍事的には意味はないが、潜水艦能力の低い東南アジア諸国に対しては、中国の強大な軍事力をアピールすることになる。

アメリカ軍空母艦隊は、それだけで人口2,000万人~5,000万人程度の国の軍事力を上回る。将来的に中国空母艦隊も東南アジア諸国に対しては、圧倒的軍事力となる可能性がある。

今回の中国遼寧空母艦隊は、軍事的には日本に対しては意味がないが、政治的には大きな意味がある。

トランプ次期大統領が中国空母艦隊との対決を避け協調体制をとれば、「アメリカ、ロシア、中国」の協調体制ができる。

これは、日本にとって最悪の展開で、第二次世界大戦と同じ国際関係となる。これは絶対に避けなければならない。

北方領土について、2島返還でロシアと早急に合意すべきだ。1941年、日本は満州国の利権に固執した結果、「アメリカ、旧ソ連、中国」の3国と対立し、戦争状態に突入した。

空母遼寧の今後

中国がロシア製艦載戦闘機Su-33を輸入した場合、尖閣列島周辺での航空優勢を中国が握る可能性がある。

空母は潜水艦からの攻撃に弱い。しかし、それは水深が500m~1,000m以上ある場合だ。尖閣列島の北側の東シナ海の水深は100m~200mなので、この海域に日本のそうりゅう型潜水艦が入った場合、中国軍に発見される可能性が高い。

そうりゅう型潜水艦に搭載されている89式魚雷の射程は39km~50kmだ。中国の空母遼寧が尖閣の北150kmに展開した場合、そうりゅう型潜水艦は水深1,000mある尖閣列島の南側から魚雷攻撃をすることはできない。

そうりゅう型搭載のハープーンミサイルの射程は140km~300kmで、中国空母も射程の納めることはできる、途中で撃ち落とされる可能性もある。

空母遼寧の設計上の艦載機数は50機~60機で、那覇基地のF-15Jは40機しかない。しかも、空母遼寧は尖閣列島の北150kmに展開し、那覇基地から尖閣列島までは400kmあるので、機数、距離とも自衛隊が不利になる。

現実には自衛隊はレーダー探知半径800kmのAWACS E-767を保有しているのでかろうじて、航空優勢を保つことができるかもしれない。しかし、それも、中国のステスル戦闘爆撃J-20により、自衛隊のE-767が撃墜されれば、中国軍が優勢になる可能性もある。

自衛隊も尖閣列島から170kmの石垣島、宮古島にF-15を配置しないと尖閣列島での航空戦では劣勢になる可能性が高い。

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